お茶の水(M20)神田川有情
7,8年前に村上もとかの漫画が原作のJINというテレビドラマが高い視聴率を上げた。現代の医師が開国直前の日本にタイムスリップし、現代医療の知見を使って人を救うというSFロマンスだった。テーマソングも大ヒットして、当時の僕たちの心に、独特な温かい感情があふれたのが思い出される。
そのタイトルバックにインサートされる神田川の古い写真が特に印象的だった。
丸の内線のお茶の水も良く使う駅だ。
この駅で向かう最終目的地が僕にはいくつかある。
一つ目は、大学の恩師を囲んで長年続けている定期的読書会の場所、中央大学の駿河台記念館の会議室だ。恩師が天寿を全うされた後も、暗黙の合意で継続している。中央大学の卒業生ではないのだが、参加者の縁で、ずっとこの場所を使い続けている。
残念ながら、古い建物は改築になるらしく、新しい場所を探さなければならなくなった。
この時も暗黙の合意で、お茶の水で違う場所を探しはじめている。
二つ目は、亡くなった恩師がことのほか愛した四川料理の店、川菜館だ。とびっきりの辛さだが、よだれ鶏やピリ辛の揚げピーナッツなど酒が進む味付けだった。
美食家だった恩師は、晩年、糖尿病を患って、かなりの食事制限をされていたが、月に一度のこの会のあとは、この店に来るのを楽しみにしていた。
その恩師が亡くなった後、なんとはなしに足が遠のいてしまったが、間違いなく最終目的地になりうるクオリティだ。
三つ目は、ジャズクラブのNARUだ。ジャズ喫茶でショートホープを吸いながら、ハイボールを飲んで、倉橋由美子の「暗い旅」を読むなどという古式ゆかしい趣味はとうの昔になくなった。たまに飲んだ帰りにタクシーの中でiPhoneでアマゾンミュージック経由で古いジャズを聴きたくなるぐらいが昔の名残である。
- ジャンル:バー
- 住所: 千代田区神田駿河台2-1 十字屋ビル B1F
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- (写真提供:くまきち。)
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でもたまにライブが聴きたくなる時がある。その時は、NARUにやってくることになる。
ジャズライブハウス お茶の水ナル、成田氏 メモリアル ~Adieu~
でも最後の最後、どこかで、僕がこの駅の出口を地上に上がりたくなるのは、お茶の水橋や聖橋の上から見下ろした神田川を観たくなるからなのだ。
その意味ではこの風景が本当の最終目的地(Destination)かもしれない。