東京アンブラー Tokyo Ambler

東京の路線図めぐり

淡路町(M19)神田小西で一杯

過疎地のJRの駅が廃止になると、とたんに町が質的に衰亡するという事態に陥る。

その因果関係の方向性は定かではない。町が質的に衰亡したから、駅の採算が悪くなるというのが先にあるのは確かなのだが、実際に駅がなくなると、最後の釘でも打たれたかのように町がコマ送りで寂れ始めるのである。特に、自ら移動する手段を持たない高齢者たちにとっては決定的な痛手となる。

 

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多分、JRの駅というのは、それ自体が一つの街のようなものであり、その街の中心に駅が位置している。すなわち駅が死ぬことは町が死ぬことに限りなく近いのだろう。

 


鉄道員 (ぽっぽや) 序章

 

地下鉄の駅(少なくとも東京の駅)はこれとは全く違った存在だ。


朗読 浅田次郎 「地下鉄に乗って」 1 / 5 ( Jiro Asada "Get on the subway" 1 / 5 )

地上の街の区分などすべてとは言わないまでも、半ば以上、無視して、地下の網の目のロジックに従って、地下鉄の駅が決定されているという印象が強い。

 

地下鉄の駅から地上に上がったからといって、JR,私鉄、地下鉄が乗り入れている大きなターミナルは除いて、自分の居場所が即座にわかるわけではないのはそのせいだろう。(ターミナルの駅は大きすぎて、別の意味でどこにいるかわからない)

 

行きなれていない地下鉄の駅から地上に出た時の途方に暮れた感じは誰もが一度は体験するのではないだろうか。

 

淡路町という駅も比較的広域にまたがる駅であり、神田、秋葉原あたりから神保町、駿河台に近い出口までが存在する。その意味で、アイデンティがわかりにくい駅だと思う。

 

僕にとっては、淡路町は、都営新宿線への乗り換えが簡単な駅という印象が強い。

 

あとは、酷暑の頃を除けば、神保町の本屋街や、大手町の方に、一駅ぐらい健康のために歩こうかという時に下りる駅だ。

 

じゃあ僕にとって淡路町は最終目的地ではないのか。

 

実はそうでもないのだ。

 

淡路町の交差点の出口を出て、靖国通り神田小川町の交差点の方に歩いて路地を左折したところにあるワインホール神田小西というレストランが実は、長年にわたっての僕の最終目的地なのだ。

https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131002/13131968/

家族、仕事、友人と、違った組み合わせながら、数えきれないくらいほど、この店には通っている。

 

酒の卸店が、割安な値段のワインが飲めるバールを作るというブームがあった。その頃に、八丁堀、根津、大塚などに同じタイプのお手頃な値段でうまいワインが飲めるレストランが一斉に誕生した。多分そのブームの先駆けぐらいにできた店のはずである。

 

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酒好きが大人数で行けば、一人ボトル一本ぐらい飲んで、普通に食べても、ひとり5000円ぐらいで済むという点を良いことに散々使ってきたし、連れて行った人に費用対効果や味を含めて、あまり文句を言われたことがない。その意味で定期的に使いたくなる、行きたくなる店だ。

 さほど酒好きでもなかった、僕が、ワインが好きになったのもこの店のおかげかもしれない。

 

まずここで、お手頃な値段で、うまいワインを飲んでから、神保町の本屋に出かけたり、駿河台のNARUに出かけたり、日本橋シネマコンプレックスに向かったりという、給油所、空母のような店、そして駅なのである。